結成35周年を祝し44MAGNUMが作りあげたアルバム『PRISONER』。ファンの方ならご存じの方も多いだろう。このアルバムに収録した曲たちは、デビュー前に制作したデモ音源や、完成しながらもアルバムに収録されなかった楽曲など、44MAGNUMのデビュー時期を軸にした、あの頃に生まれた曲たちが中心になっている。近年では、息子のSTEVIEもヴォーカルに加わり歌うことの多かった44MAGNUMだが、本作ではPAULが全曲を歌唱、44MAGNUM活動初期の頃の香りをプンプン匂わせる曲たちが並んでいる。まさか、デビューから35年もの歳月を経過し、こんなにも往時のギラついた音を、時を越えて味わう感覚を覚えようとは…。
その理由もあるのか、昔から44MAGNUMを支持してきたファンたちもアルバム『PRISONER』を絶賛。そのアルバムを手にしたライブツアーが、2月3日と10日に新横浜NEW SIDE BEACH!!で行われた。先に伝えておくと、この2日間のライブのために彼らが用意したのは、最新アルバム『PRISONER』へ収録した楽曲たちはもちろん。『DANGER』『STREET ROCK'N ROLLER』『ACTOR』と、1-3枚目のアルバムに収録した曲たちが中心。アルバム『PRISONER』もその時期に生まれた曲たちが主のように、今回のツアーは、44MAGNUMの歴史を歩んできたファンたち。中でも、活動初期からメジャーで精力的に活動していた頃の44MAGNUMを知る人たちには垂涎な内容。ここでは、2月10日に行われたライブの模様を記したい。
メンバーが姿を現すだけで血が滾る、この感覚は久しぶりだ。フロア中から沸きだす歓声。そう、誰もが待っていた、自分たちが想いを馳せたヒーローたちの登場を!!
ライブは、期待を爆発させるように、最新アルバム『PRISONER』に収録した『UK』からスタート。JOEのしなるようなタイトなドラムビートの上で、BANのベースが唸り、JIMMYのギターが吠えるように音を荒らげだす。PAULが舞台上から客席を睨むように歌い叫べば、その気迫を、STEVIEがさりげなく後押ししてゆく。お前ら、これから暴れられるんだろうと熱い誘いをかけるよう、『UK』がフロア中へ熱を抱いた音をぶち蒔けていた。
飛び出したのが 1stアルバム『DANGER』に収録した『I'm On Fire』だ。イントロが流れると同時に、観客たちが熱い雄叫びを上げ、拳を高く突き上げ、襲いかかる衝撃を全力で受け止めていた。身体を突き刺すJIMMYのギターの音が気持ちを嬉しく震わせる。どっしりと構えながらも、巧みにシャウトを絡め、観客たちの身体を踊らせるPAULの歌に心が惹きつけられた。ザクザクとしたギターの音と、腹の奥底まで響かせるリズム隊の演奏に乗せ届けたのが、最新アルバム『PRISONER』へ収録した『Come On Let's Go』だ。35年という時代の流れさえ一気に濃縮、44MAGNUMは44MAGNUMでしかないという存在感を彼らは突き付けてゆく。ステージ上から放つ豪快な音に触れていると、拳を突き上げたくなる。身体を揺さぶりたい想いへ駆られる。このままフルスピードで、会場内へ衝撃をぶち蒔けてくれ!!!!!
「腹立つなー、1曲目イヤモニのスイッチ入ってなくて、何歌ってんのかわかんなかったよ」と語ったのはPAUL。そんな素振りさえ感じさせないところが経験の成す技というものか。
観客たちの理性を破壊するように『Ow!』が飛び出した。ゴツゴツとした鋸で身体を切り刻むように響く演奏だ。その上で、貫祿を持った歌声を雄々しく這わせるPAUL。JIMMYの鳴らすギターのリフが、胸の奥底へグサグサと突き刺さる。ワイルドでハードなロックンロールの神髄とは何か、その答えを突き付けるように彼らは音を投げつけてきた。
初期44MAGNUMナンバーが多い中、STEVIEの見せ場として用意したのが、9thアルバム『ANGEL NUMBER』へ収録した『Liar』だ。重厚な音が滝のように降り注ぐ上で溜めを効かせた歌声を響かせれば、シャウトも交え、観客たちを挑発。STEVIEの歌へ寄り添うどころか、彼を挑発するようにブルーズでハードな演奏を唸らせるJIMMYのギターにも気持ちはグッと引き寄せられた。豪快でワイルドでタフな音も、たまらなく刺激的だ。
豪圧なJIMMYのギターを煽るようにビートを響かせるリズム隊、飛び出したのが『No Standing Still』。フロアからは、これまで以上に拳が多く突き上がる。胸をくすぐるサビ歌を響かせるPAULの歌声に触れていると、身体が嬉しく震えだす。そう、立ち止まるなんて不可能だ。このまま地の果てまで、奈落の底へ堕ちるまで、豪快にロックし続けようじゃない!!!!!
「客席のみんなにSTEVIEと言われてるのか、JIMMYと言われてるか、チビーと言われてるのか。罵倒されてるみたいだな」と語ったのが、STEVIE。「今日は社長が来ています、お前がいると緊張するんだよ、帰れ!!」と洒落の効いたMCを投げたのがPAUL。なかなか癖の強い親子じゃないか。むしろ、そこへも濃い血の繋がりを覚えると言うべきか…。
「大好きなバラードを歌わせてください」。PAULの言葉に続いて披露したのが、『Love Desire』。泣き濡れるギターの旋律に乗せ、魂と声を震わせるようにPAULが歌いだした。バラードとはいえ、存在感あふれる重厚な音を響かせるところも44MAGNUMらしさ。想いを震わせ歌うPAUL、その横で激しくむせぶJIMMYのギター。その対比にも、心は強く惹かれた。挑発するように轟くリズムの上で、歪む音をはべらせるJIMMY。『It's Raining』だ。心揺れるまま、震えるままに歌声を導くPAUL。彼の歌声を煽るように後押しするSTEVIE。哀愁を抱いた歌声は、触れた人たちの心にも哀切な気持ちを塗り重ねていた。その音に身を預け、心を高ぶらせろ。44MAGNUMは、緩急巧みに表情を変えながらドラマを描き出す『Champ』を演奏。抑えた感情と沸き上がる情熱を巧みにコントロールしなから、44MAGNUMは会場中の人たちの心へ沸き上がる熱を注いでいった。フロア中の誰もがその熱を全身で受け止め、心の中で燃え上がらせていた。
挑発するJIMMYのギターが合図だった。牙を剥き出した演奏に乗せ、PAULがふたたび声を荒く震わせる。豪快に響き渡る『Girl』の演奏の上で、感情のストッパーをふたたび外しながら、気持ちの導くままにPAULが歌い叫ぶ。暴走するロックンロールナンバーが身体を熱く滾らせる。もっともっと気持ちを解き放ち、騒ぎ狂いたい。その想いを具現化するように、44MAGNUMは『Lock Out』を突き付けた。ワイルドでブルーズなタフなロックンロールに飛び乗り、フロア中の人たちが拳を高く突き上げ、PAULの歌や煽りに合わせ声を上げだした。豪快な楽曲なのに身近さを覚えたのは、彼らが懐大きく観客たちの熱狂を受け止めていたから??。唸るロックンロールの上で雄々しく歌う、その様が最高だ!!興奮渦巻く空間へ華やかな熱狂を描き加えるように、44MAGNUMは『It's Allright Now』を演奏。荒ぶる音が、どんどん派手に色づきだす。そんな感覚を胸に抱きながら、誰もが天高く拳を突き上げていた。気持ちを華やかに染めあげる楽曲だ。フロア中から歌い叫ぶ声が上がっていたのも、誰もがこのパーティを無邪気に楽しんでいたからだ。
「みんな新譜聞いた?最高だよねぇ。自分が歌ってないからさ、自画自賛じゃないから、素直にそう言えるよ」(STEVIE)
ライブは終盤戦へ。ヴォーカルをSTIVEが担当。飛びだしたのが、ダークでワイルド、何よりスリリングな演奏を突き付けるスケールあふれたブルーズロックな『She's So Crazy,Make Me Crazy』だ。雄々しいビートの上で、吠えた音を吐き散らすJIMMY。重厚な音をすべて懐で受け止め、雄々しき声に変え響かせるSTEVIEの歌に、改めてブルーズ/ハードロックな息吹を感じずにいれなかった。
激しく猛々しい演奏が轟いた。飛び出したのが『Back Street Derinquent』。吠える演奏の上で、気持ちを剥き出しに歌うPAULとSTEVIE。とても挑発的だ。暴走した機関車のごとく野太い音を吐き散らし駆ける演奏へ、会場中の人たちも気持ちを重ね合わせ、魂を熱く震わせていた。その勢いを加速させるよう、最後に44MAGNUMは『The Wild Beast』を届けてきた。荒ぶる演奏に乗せ、PAUL自身も剥きだした野獣の牙を突き付け、観客たちを食い散らすような気迫と感情を武器に挑みかかる。熱した鋼のような演奏を身体へ叩きつけられるたび、その痛みに興奮を覚えた観客たちが絶叫と拳を上げていた。挑発し続けるPAULとSTEVIE。このまま、ロックロールの悪魔の打ち鳴らす宴の響きに震えながら騒ぎ狂え。それを彼らも、観客たちも求めていた。
アンコールで飛び出したのが、『Your Heart』。ザクザクとしたワイルドな音の上で、朗々と歌声をはべらすPAUL。胸を嬉しく揺さぶる歌へ触れたとたん、身体中からエナジーが沸き上がる。PAULの歌声と掛け合う観客たち。誰もが大声で「Heart」と叫んでいた。そう、これぞ44MAGNUMの神髄だ。ハードなロックロールが導き出す興奮の魔法。燃えあがるこのときめきは、この空間中にだけ生まれる最高の恍惚だ。もっともっと狂いたいんだろうと挑発するように、44MAGNUMは『Street Rock'n Roller』を突きつけた。JIMMYのギターが吠えると同時に、会場中の人たちが両手を高く突き上げ、その衝撃を全身で受け止めていた。演奏が暴走したとたん、PAULやSTEVIEの歌に合わせフロア中から掛け合う声が飛び交っていた。身体を、魂を震わせる楽曲だ。誰もが理性と感情のストッパーを叩き壊し、彼らと一緒に熱したロックンロールの宴の中へ身を投じてイッた。
覚めぬ興奮。ふたたび舞台へ姿を現した5人は、最新アルバム『PRISONER』に収録、本当は1stアルバムへ収録する予定だった『I'm Lonely Man』を演奏。輝きを集めるように勢い良く駆けだす演奏の上で、PAULが孤高のロックンローラーが抱えた想いをぶち蒔けるように歌いあげた。PAULとSTEVIEが歌を交わせば、サビでは熱くハモリだす。間奏での野太い音を交わす熱いセッションも刺激的だ。フロアにも、ふたたび熱気があふれだす。
最後の最後に、44MAGNUMは『Satisfaction』を突きつけた。フロア中から沸きだす絶叫と無数の拳。豪快に走りだした楽曲に合わせ、飛び跳ね騒ぐ観客たち。サビではPAULやSTEVIEの声に合わせ、会場中の人たちが共に熱唱。その楽曲を誰もが自分たちの血肉にし、明日へ立ち向かうエナジーに変え、拳を振り上げ歌っていた。華やかなこの一体感が堪らなく気持ちいい。誰もが心を少年少女に揺り戻し、拳を振り上げ続けていた。JOEのタイトでワイルドなドラムビートに乗せ観客たちが雄叫びを上げれば、PAULやSTEVIEと魂と魂の抱擁を熱く交わしあっていた。
何時だって44MAGNUMのライブは、気持ちを青春時代にレイドバックしてゆく。もちろん、あの頃と同じ空気を味わえるわけではない。でも、燻銀な今の空気が作り上げる、懐メロではない、今を生きるロックンロールの息吹も十分に刺激的だ。思い出さえも明日の活力に変えてゆく興奮と楽しさが、ここにはある。そのライブは、何時だってあなたの心をSatisfactionしてくれるはずだ。
この熱狂を味わいたいなら、3月と4月に大阪と東京で行う35周年を締めくくるライブに足を運んでくれ。そして、生でその臨場感と興奮を味わい尽くして欲しい。
TEXT:長澤智典
『UK』
『I'm On Fire』
『Come On Let's Go』
-MC-
『Ow!』
『Liar』
『No Standing Still』
-MC-
『Love Desire』
『It's Raining』
『Champ』
-MC-
『Girl』
『Lock Out』
『It's Allright Now』
-MC-
『She's So Crazy、Make Me Crazy』
『Back Street Derinquent』
『The Wild Beast』
-ENCORE 1-
『Your Heart』
『Street Rock'n Roller』
-ENCORE 2-
『I'm Lonely Man』
『Satisfaction』
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